道の駅北川はゆま

Cinemarama English #3 『真夜中のカーボーイ』

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今回取り上げるのは『真夜中のカーボーイ』です。原題は”Midnight Cowboy”なので正しくは『真夜中の“カウ”ボーイ』です。そしてこの言葉は“男娼“という意味もあります。ちなみに爆笑問題のラジオ番組「爆笑問題カーボーイ」はこの映画から取ってきていますよ。ではいつもの通り、クライテリオン社のDVDに書かれている商品説明です。

■原文

One of the British New Wave’s most versatile directors, John Schlesinger came to New York in the late 1960s to make Midnight Cowboy, a picaresque story of friendship that captured a city in crisis and sparked a new era of Hollywood movies. Jon Voight delivers a career-making performance as Joe Buck, a wide-eyed hustler from Texas hoping to score big with wealthy city women; he finds a companion in Enrico “Ratso” Rizzo, an ailing swindler with a bum leg and a quixotic fantasy of escaping to Florida, played by Dustin Hoffman in a radical departure from his breakthrough in The Graduate. A critical and commercial success despite controversy over what the MPAA termed its “homosexual frame of reference,” Midnight Cowboy became the first X-rated film to receive the best picture Oscar, and decades on, its influence still reverberates through cinema.

■単語

wide-eyed: adj,naive

「素朴な、純真な、だまされやすい」

他にも「びっくり仰天した」という言葉語感からイメージしやすい意味もあります。なので田舎から出てきたお上りさんが都会で目を丸くして驚いている図をイメージすると両方の意味を掴めます。正にこの映画のジョーにピッタリです。

score: verb, to have sex with someone, especially someone you have just met

「行きずりのセックスをする」

英語には“sex”, “fuck”等を使わずにセックスを表現する単語がたんまりあります。例えば“do”, “make love”。それは日本語でも一緒ですね。「やる」「愛を営む」「チョメチョメ」「ニャンニャン」など。…後半古すぎますね。

ailing: adjective, ill and not likely to get better

「良くない病気を抱えた」

“ill”とも似た形容詞ですがこの言葉には、「慢性的な、患い続けている」という一時的じゃないことを含んでいます。

swindle: verb, to get money from someone by deceiving them

「金を騙し取る」

文中では“swindler”と人を表す名詞になっているので「詐欺師、ペテン師」ですね。

quixotic: adjective, quixotic ideas or plans are not practical and are based on unreasonable hopes of improving the world

「現実離れした」

これは面白い形容詞ですね。小説「ドン・キホーテ」から生まれた形容詞と云えば意味をすぐ掴めるかと。

a radical departure: something very different

「まったく異なった」

“radical”だと「とても大きな」「革新的な」という形容詞ですがこのコロケーションでは上記の意味になります。

reverberate: verb, if an event, action, or idea reverberates, it has a strong effect over a wide area and for a long time

「反響する」

後の作品、社会、人物等に多大な影響を与えたことを描写する際に使えるカッコいい動詞です。

■日本語訳

イギリス・ニューウェーブの中で最も多才な監督の一人、ジョン・シュレシンガーが60年代後半のニューヨークにやって来た。危機に晒されている都市の虜となった友情のピカレスク物語で、かつハリウッド映画の新しい時代の口火を切った映画『真夜中のカーボーイ』を作る為に。ジョン・ヴォイトは後のキャリアを決定づける、都会知らずで素朴、そして金持ちの女性たちの男娼になってしこたまセックスしてやろうとテキサスからのお上りさんジョー・バックを演じる。やがて彼は脚が悪く、病気を抱え、フロリダへ逃げ去りたいという現実離れした夢を抱く詐欺師:エンリコ・ネズミ・ラッツォとつるむようになる。ラッツォを演じるのは『卒業』で大成功を収めたダスティン・ホフマンで、今回全く違った役柄を演じる。MPAA(アメリカ映画協会)が一体何を“同性愛描写の基準”とするのかという物議を醸したにも関わらず、批評的にも興行的にも成功を収め『真夜中のカーボーイ』は史上初めてX指定映画でアカデミー作品賞受賞作品となり、そして何十年もの間、この作品の影響は映画の中で今尚響き渡り続けている。

■Forの面白い用法

Forは「~のために」や「~に向かって」と目標を示す役割を担う前置詞ですが、中々学校の教科書や試験では登場しないけど、日常会話や文章内で使われるユニークな意味があります。

例えば以下の文

It’s hot for May.

さて、わかりますか?もっとわかりやすい例文。

She looks young for her age.

日本語訳はそれぞれこちらです。

「五月のわりには熱い」

「彼女、あの年齢にしては若く見えるね」

For: preposition, used to say that a particular quality of someone or something is surprising when you consider what they are

予想に反して~だという表現を使う際に用いる前置詞です。日本語では「~のわりには」「~にしては」

さて、『真夜中のカーボーイ』では、ジョーがようやく都会風に洗練された身なりをキメた姿を見て、ラッツォはこのように使われています。

“Not bad. Not bad, for a cowboy”

ラッツォ「悪くねぇ。悪くねぇじゃねぇか。(ニヤッと笑って)カウボーイにしてはな」

と最後に付け加えてニヤリとさせてくれる台詞になっています。

この“for”の用法は意外に出くわしますし、映画内では味わい深い台詞の際に顔を出すので覚えておくといいですよ。例えば『エイリアン2』のビショップの台詞。

“Not bad for a human”

「人間にしてはやるじゃないか」

■一口感想

都会の隅っこで肩を寄せ合いながらもがいている二人の若者が、心も寄り添うように生きるようになり、やがて寂しい結末になる物語は後に全世界で摩天楼を抱える国で作られます。クライテリオン社の説明では「ピカレスク物語」と称している通り、下層階級から出てきた者が金持ちや上流階級をずる賢く利用とする形式をとっています。このスタイルは悪漢小説として文学の中では16世紀頃に誕生しています。このピカレスク的な物語と60年代のニューヨークの雰囲気が抜群にはまりました。渇いた空気が吹く都会の荒野の中で語られるこの物語と結末、そしてアメリカン・ニューシネマの中の代表作の一つとして数えられる為に暗く厳しい現実を突きつけるような作品だと思われていますが監督のジョン・シュレシンガーはこの物語は希望を描いていると考えています。作中ラッツォの助けもあってようやく念願のヒモ生活を送れそうになるも、ジョーは身体が弱りつつあるラッツォを彼は選びます。そして、ジゴロになって楽しく生きる人生の道もゴミ箱に捨てます。煌びやかな大都会での夢描いていた生活よりも、そこで見つけた悪友を選んだ友情によって真夜中の暗闇から駆け抜け出してゆく若者の物語でもあるのです。