道の駅北川はゆま

ゴースト・バスターズ(2016年)

映画

本国アメリカでは酷評に次ぐ酷評。批評家の評判も一般の観客からの評価も悪い(IMDb 5.5/10、批評家の平均スコアは60/100)。しかしフタを開けてみたらかなり楽しいコメディ・アクション映画だったぜ!
■ゴーストな時期に公開して帰って来た!まず感心した点を。
今回、悪役の設定が秀逸な事、過去作品の設定やギミックへの繋げ方、出演した俳優達の登場のさせ方がとにかく上手い!!
例えば今作の悪役に値する人物が周りの人間から馬鹿にされ気味悪がられて虐められた人間が”この世はゴミだ”と思って、この世に怨念を持つゴースト達を解放しようとするのはとても理にかなった闇だと思うよ。
過去作への繋ぎ方に関しては一気に出さずに、ストーリーのテンポを邪魔することなく、むしろ良いアクセントのタイミングでバシッと出してくるあたりがエンターテイメントとして出来上がっているよね。
例えば、オリジナル版の『ゴーストバスターズ』に出てきたあの仕事場もちゃんと出てくるし、プロトンビームが完成された形では出てこなかったり、あのシンボルマークの生まれ方も良い感じじゃん!
ここら辺で、もうこの映画、絶対に楽しい!」とハートを掴まれ、それは最後まで離しませんでしたね。
そしてゴーストバスターズは怪獣映画としても楽しめる最終決戦がありましたが、今作でもそれはちゃんとあるし、まさかの「お前かよ!」っていう恐怖と喜びのサプライズは是非劇場に足を運ぶ価値はあるぜ。
あとリブートにあたっての新キャラクターのメンツがそれぞれちゃんと立っているし、誰もこの映画の楽しさを作り上げるのに邪魔していない。多くの人が挙げるようにやはりホルスマンを演じたケイト・マキャノンが超カッコ良いのと、クリス・ヘムズワースのちょっとマズイぐらいのおバカさん:ケヴィンはぶっ飛んでていい!チョットやり過ぎだろッって思うかも知れないけれど、誰も彼を嫌いにはならないよ。
そして終盤のアクションは間違いなくオリジナル版を凌駕している。映像的に迫力があるとかCGがいいだけじゃなく、ちゃんと動きながら退治している様子はアガる!オリジナル版は立ってプロトンビームを撃つだけだったけれど、そこの問題点をちゃんとオリジナルを踏まえた上でアップデートしている。
とにかく楽しさがギュウギュウに詰まっていてエンドクレジットまで愉快で大満足なエンターテイメント作品だ。
わざわざ夏のこの時期に先行上映を開始するあたり、タチの悪い冗談かと思うがご先祖様たちやちょっとだけ帰って来てくれた人達にも勧めたい愉快な一本だったぜ!
■闇をのぞかばここからちょっと嫌な話題になりますので、読みたくない人はここは読まなくていいです。この映画が苦しんでいる闇を覗きたければどうぞ。

さて、この映画は実は大変な話題を巻き起こしてしまった。
それはYouTubeで公式の予告編が史上最も嫌われた映像になってしまったのだ。
8/14現在で99万ものネガティブな意見が下されている。
この2016年版の『ゴーストバスターズ』は公開する以前からメチャクチャ嫌われた作品になっていた。
その評価の根拠は『ゴーストバスターズ』のメンバーを男性から女性に変えたから、というのが大きな要因だ。
「フェミニズムへ媚びている」だとか「おばさんばっかで嫌だ」などの意見が殺到し、しまいには作り手への殺害予告などの馬鹿げた非難まで飛び交った。
さて、この二つを順に検討してみよう。
フェミニズムへのゴマスリだろという点。そんなこと全然ないと思うよ。ちゃんとこの映画では女性たちが身を張ってパワフルに活躍しているし、イケメンの男性の前だと頭がおかしくなっちゃう主人公をギャグにしている。
クールにも、ピエロにもしているじゃないか、女性をさ。そこら辺のどっちもちゃんと描くフェアな感じがいいじゃん。女性優位を描いてなんかいないよ。
クリス・ヘムズワース演じるケヴィンが馬鹿過ぎて男を馬鹿にしているって?そんなの、これまでブロンドヘアーの女性のステレオタイプで散々おちゃらけたハリウッドへのキツいジョークじゃんよ!
おばさんばっか、という点。元々オリジナル版も冴えないおっさん達だっただろうに。そしてそれが良かったんだ。スーパーヒーローじゃない人がNYのヒーローになっていくのが良かったんだ。
また、オリジナル版のキャストは「サタデー・ナイト・ライブ」というテレビ番組の人気者が出演しているのもポイントだったが、今作の主人公たちもサタデー・ナイト・ライブ出身&出演中の方々ばかりだよ!
ちゃんとオリジナル版にあったテイストと作品の軸の作り方を継承しようとしているんだよ。そこら辺、ちゃんと踏まえた上で批判するならしなよ。
その上で彼女達のギャグやキャラクター、演技が問題があるならしょうがないけどさ、観る前から女性のルックスだけでつまんない、観たくないとかのレッテルをベタベタ貼るのは下品じゃないのか?
もう一つ、そしてかなりマズイ批判は本編を観ていないのに酷評している奴がいる事だ。
これはYouTubeのコメント欄で確認できるんだが、予告だけで中身全体が酷かった(現在完了形)と評価しているものがある。
それに対して「どこかどう酷かったの?説明してよ」とコメントがあると、「私は観ていないし、ソニー(この映画の制作会社)に金を払いたくない」と返している。
もう…ナンセンスの極みだ。
観ていないものを観たかのように酷評する。多分この人たち、流されたんだろうね。
みんなが言うから、みんなが煽っているから、みんなが石を投げているから。
圧倒的に批判は多いが、大抵は上記に挙げた三つだ。
他にはジョークが面白くない、CGがちゃちい、新しさがない、脚本がダメ…などなども批判されているが本当に本編観た?
日本の映画館で声を挙げて笑っているし、CGも迫力あるし3Dは好評だ。ニュー・ウェポン、新しいキャラクターは魅力的だし、脚本はちゃんと過去に実績があるポール・フェイグ監督(『ブライドメイズ』『フリークス学園』)とケイティ・ディポルド(『パークス・アンド・レクリエーション』)が書いているし、テンポや伏線が抜群に上手い!
正直私個人の意見としては、ほとんどの批判が的外れか、偏見という醜いフィルターで必死に過去の名作を守ろうとしているか、同調して声を荒げている卑怯者の幼稚な行為にしか見えない。
この作品が面白くない、合わない、ここが気に食わなかったとかあるよ。それはいいんだ。だけどその前からこの映画の評価を決めてかかって、しかも潰そうとしていることが問題だし汚らわしいってことが私は言いたいんだ。
過去観た作品に思い入れをするのは全然いい。大切な思い出を汚されたいなんて誰も思わないよ。私もオリジナル版大好きだし、コメディ映画として一級品だ思うよ。
けれど、だからと言って、寄ってたかって攻撃をしていいわけじゃないぜ。残念ながら、日本でもアメリカの評判の波にのまれて観た気になってつまらなさそう、とネットに書いている人がチラホラといる。
繰り返しになるけれど、観た上でつまらなかったらつまらなかったでそれでいいんだ。
ただ、自分の頭で考えない”つまらない”は、きっと”つまらない人間”になるぞ。
■最後の一言私は夜の回で字幕2D版鑑賞しましたが、席は結構埋まっていましたし、上映中かなり笑い声沸き起こっていました。ちゃんと観客が遠慮なくケラケラ笑いながら鑑賞できる空間は久しぶりでしたね。
終わった後もエンドクレジットが終わるまでほとんど席を立たなかったし、灯りがついた後に見えたのは明らかに満足したものを観た人たちの顔でした。先行上映でお盆の時期に鑑賞したので、空席にはご先祖さん達が観て楽しんでくれているのかもなって思っちゃったりしました。
本国アメリカでは酷評され批評され叩かれて、興行収入も散々な今作品。続編もかなり危ういとのことだけど、私は彼女達&ケヴィンの姿がまた観たいと思うよ。擁護の気持ちじゃなく、本当にマジで純粋に楽しい作品でした。
よくできた脚本と構成、CGのクオリティもOK!新しく発明されるニューウェポンのカッコよさに、随所に散りばれられた過去作品やホラー映画へのオマージュという名の敬意。
あぁ、ゴーストなんかよりこの映画を偏見のネバネバスライム越しで観ているor観たようなバスターズ(クソッタレども)の偏見を退治してぇよ!
今のところ、今年映画館で一番楽しい映画でした。