道の駅北川はゆま

シュガー・ラッシュ

映画

様々なゲームの登場人物が大集合し、ゲームの世界で繰り広げられる大冒険!もう、このあらすじとヒロインのヴァネロペちゃんが超可愛いというだけでスコアは1,000,000点なのだが、もちろんこの映画はそれだけではないよ。
ディズニーが悪役に焦点を当てることによって、新しいヒーローの描き方を見つけたマイルストーン的作品でもあるのさ。
そして描かれる葛藤というのは社会から正当な評価を与えられない者や、障害や性質によって迫害される方々の抱く苦しみや悩みに呼応している。誰だって正当な評価を人からされなくてイライラしちゃうことはあるでしょう?そこを上手くついて、悪役を演じ続けるキャラクター:ラルフにしっかりと感情移入できるあたりの導入はお見事!そしてラルフが最後に見出す自分が与えられた役割を果たす意味はとても温かく、そして素晴らしい。まるで中島みゆきの「空と君のあいだには」みたいな感じでかなりグッときます。
また、前述した今作のおてんばヒロイン:ヴァネロペちゃんがまぁーちょこまかと動いて可愛いったらありゃしない!時折バグっちゃうという問題を抱えている為にみんなから爪はじきにあっているこの子(まるで自分を見ているようだ!)と、悪役ってだけでみんなからのけ者にされているラルフが意気投合していいコンビになるあたりも自然だし、ヴァネロペの意外な正体もあっと驚くぞ!そしてその本来請け負っている役割をいとも簡単に放棄し、自分のありたい自分で生きてゆくということをたった数分で見せるラストもいい。さらりとクラシックディズニーのプリンセス批判ですよ。そしてそれがいいんだ。これは『魔法にかけられて』から『アナと雪の女王』につながっていて、ここでもちゃんとその要素はある。
悪役が主人公だとしたら、今作の悪は善人?かと思いきや、ゲームの主人公フィリックス君もとてもいい奴。彼と武装アーマーを着ていても超絶スタイルグンパツのカルホーン大佐とのロマンスなどもいいアクセントになっているね。
では今作に描かれる悪とは?これもまた中々うならせてくるようなモノを抱えた意外なキャラクターだ。古きものが新しいものにとって代わる恐怖や嫉妬という感情がそのキャラクターを暴走させるというのは、すごく納得がいくし人間が潜在的に抱える闇かもしれない。もちろんこれはピクサーが既にやっているが、それを徹底した悪に持っていった所が新しくも、この『シュガーラッシュ』がゲーム版『トイ・ストーリー』と云われた所以だろう。この作品の本当の悪が抱く闇はウッディが抱えた闇と一緒なのだ。
とまぁ、とにかく贅沢にデコレーションされたケーキのように様々なテーマがトッピングされている。だが、その味は決して甘くなく、絶妙に調和された味わい深いものだ。まるで観る人の人生のお菓子としても作用するほどのワクワクを届けてくれる映画。ゲームが好きかどうかはそんなに重要じゃない。私の世界ではない場所で、私たちと同じように悩み苦しむキャラクターたちを観たいなら、観るべき傑作だ。